法人契約
不動産業界では、会社名義で行う賃貸契約等のことです
不動産取引における法人契約とは、通常、賃貸契約の名義人を法人つまり会社名義で行う契約の事です。
賃貸契約では、入居者本人を契約者である賃借人として、住居として使用するための契約となります。法人や個人が店舗や事務所、倉庫などとして使用するために、法人や個人を契約者である賃借人として結ぶ契約などが存在します。
なかでも、メインの住居として「個人や一家で使用するために個人が契約者として借りる」ときの契約には、その他の賃貸契約にはない、入居者保護のためにさまざまな制度や慣習などがあります。
法人契約では、メインの住居として入居する本人ではなく、その勤務先などの法人として登記されている組織が契約者となります。通常は契約書中では、契約当時の法人名と代表取締役氏名などが入る物が一般的です。この契約の場合、個人や一家で使用するために個人が契約者として借りる時と同じような、制度や慣習の一部は適用されません。
法人契約物件の住居の場合、従業員に住まわせるという目的がありますが、借り手側の法人の運用方法としては大きく分けて2つあります。その会社の社員のうち誰か不特定の人が交代で住むことができる物件と、とある社員のために人物を特定して住むことができる物件です。
法人契約の住居では、このどちらのタイプの契約を行うかによって、責任範囲や退去や解約となる条件などが異なってきます。
前者も後者も、契約書内に実際の部屋の使用者として社員名などを記載するものが多いものの、中には記載せずに契約する書式のものもあります。入居者が特定されている場合は、その人物が退社したり転勤等で退去するときには、基本その物件の賃貸契約を別の社員の住居のためには引き継がずに、退去解約となるといった運用の物が多くなっています。
中には、このタイプの契約書で、入居者が変わるたびに新たに入居者欄を差し替えて利用する契約書を交わすタイプのものもあります。
また入居者が特定されていない場合は、通常の個人が借りる賃貸物件のような扱いではなく、借り手を法人とした入れ替わり運用型の寮や社内ルームシェアのような形で運用される物が多くなっています。わかりやすく言えば、借り上げ物件内であれば、社員のうち誰かが退社や転勤等で退去しても、ほかの社員が部屋の新たな住人である使用者になれるというものです。
この場合、物件管理の都合上、使用者名簿などを別途作成して契約時に取り交わしたり、変更が発生する都度連絡などを行うような形とするのが一般的です。またこの形式の運用でも、賃貸契約書の使用者欄に入居者名などが記載されるものなどもあります。
このタイプの契約では、長い契約期間となり、その間に通常の家屋よりも人の入れ替わりに伴う引っ越し作業が多く発生します。それゆえ不動産管理部分、とくに入退去時の修補や汚れなどの負担も通常より多く発生するケースが多く、前者のタイプの法人契約住宅物件と比較すると敷金礼金やその他の一時費用や預入金等が高くなるのが一般的です。
この2つのどちらの契約タイプであれ、不動産を借りる際の申し込みや審査の段階で、運用方法を決定しておかなければなりません。もし、前者の入居者が特定されているタイプで契約書上、入居者が退去したあとは解約するといった内容になっているのに退去後、別人を住まわせている時には、違約金等が発生するケースもあります。
また店舗、事務所、倉庫等の物件では、通常法人契約では、組織名と代表者名が記載された契約書となります。法人の代表者が変わったときは、通常、代表者を変更した契約書を取り交わさなくても、法人組織が変わらず存在している限り、その契約書は有効です。
ですが、慣行上、賃貸契約のステークホルダー宛には、役員変更の正式な挨拶状などを送るとともに、その旨を事前に報告しておきます。契約更新時までは、かつての代表者名の契約書で継続される方が一般的です。
また、よく似た書式の契約書で、法人組織の賃貸借契約の契約者が法人、その連帯保証人として代表者が個人保証するタイプのものがあります。
比較的小さな企業や、設立間もない企業、その他の事情で不動産会社や保証会社、金融機関等から個人保証を条件とされた場合によく使われる契約方法です。この場合で、法人の代表者が変わる場合には、個人保証をしている人物の名義も、新しい代表者に変更するのが一般的です。
この契約書で万が一、この連帯保証人の名義を変えていなければ、退任後も連帯保証人として支払い等の債務履行請求がされます。この場合、退社したことやすでにその法人とは関係が無いといっても、それを理由として支払わないといった主張は、通常できません。
契約書上の個人保証の名義を新たな役員名に変更するとともに、先ほどの賃貸契約の役員変更時と同じく、挨拶状等の中で、退社することや以後社とは関係がなくなること等を各ステークホルダーに確実に通知しておく必要があります。
法人契約ではこの他、営業用に個人で借りていた物件を法人契約としたり、逆に法人から個人としたり、社員が個人として契約している住宅物件等を後から法人契約としたり逆に法人から個人に、といった契約などが存在します。
個人から法人には比較的審査が通りやすいものの、その逆のケースでは、特に借り手側に問題が無くても審査に通りにくく、退去を余儀なくされることもあります。
またこの際は、これまでの契約が引き継げることは通常あまり無く、新たに契約を結びなおす形となるため、それなりの一時費用や保証金等が発生します。個人や法人組織の安定度などの影響をうけて、保証会社や保証金等に関しても、これまでとは全く異なる条件での契約となることが一般的です。
大家さんや不動産会社とのこれまでの関係により、契約が引き継げるかどうかといった部分が大きいほか、その法人組織がどういった理由で改組したかといった事項が大きく関係してきます。
契約を引き継ぐ場合も、新たに取り交わす場合も、いずれも事務手数料だけでも費用は発生するため、契約書に定められた更新の意思表示日より数か月前には事前相談が必要です。そのうえで、どういった形でその物件が借りられるか、大家さんや不動産会社と調整していく事になります。