現況渡し
あるがままの状態で契約者に引き渡すといった意味です
現況渡し(げんきょうわたし)とは、お部屋探しの広告や、物件詳細、契約書などに良く見られる用語です。
この現況とは、土地売買や建物売買においては、新たな整備や造成などを行わないまま、今ある形のままで取引される事です。現況有姿や現状渡しなどとも呼ばれていますが、使用している不動産会社などによって、その指し示す範囲には違いがあるようです。
いずれも現況渡しと書かれていれば、通常なら不動産業界の慣習である、売主や貸主側が残置物を撤去もしくは処分した後の修補などを行わない状態で、引き渡しが行われます。
現況有姿と書かれていれば、引き渡しまでの間にさらに物件そのものに変化があったとしても、契約締結後はその変化を受けたまま、引き渡し時点までの変化後あるがままの状態で引き渡す、などを表すことが多いようです。
契約書などにこの現況渡しが歌われている場合、通常は「取引時に説明した範囲を根本的に覆す程度に大きな機能上の不備があり、本来の取引内容とかけ離れているといった以外の場合、改修や修繕は一切行いません」といった意味で使われていることも多いようです。
特に法律による定めがないものでもあるため、物件や取り扱う不動産会社、売主によって状態はさまざまです。
他に、現況優先といった表示もあります。この場合は、図面や不動産広告といった資料ではなく、物件本体そのものの現在の状況のことを表す=図面や不動産広告には確認できていない部分、現在の物件の状態と一致していない部分がありますよ、と表していることも多いようです。
さらに分譲物件や賃貸住宅関連では、周囲環境、とくに学校や病院・店舗などの周辺施設も含めて変化し続けている現在の状況を表しているケースもあります。たとえば、現在近所で営業している店舗が数か月後に廃業が決まっているケースや、地震などが続いており建物そのものや給水設備、周辺の町の基本機能の状態が変化し続けているといったケースなどです。
現況渡しや現状渡しと書かれていれば、現在の状況は物件の今ある姿そのものの意味です。資料などで見るだけではなく、直接現地を確認したうえで契約してください。
最近多いケースでは、前住人の家具家財やゴミなどが大量に置かれており、その処分費用などを飼い主が負担しなければならない物件も有ります。また建物引き渡しとほぼ同時に、柱や外壁などに工事を行わなければ、建物が自立して存続することが困難といったような物件までも存在します。
契約後引渡後、大きな機能障害があったとしても、居住等の目的が果たせないといった問題があったとしても修繕しませんのでノークレームでお願いします、といった意味が含まれている場合もあります。
通常、現況渡しの不動産広告や契約書では、残置物や修補の範囲、瑕疵免責の範囲などを明確にして契約を交わせるように、条件付きの広告となっている、あるいは特約がされているものが多いものです。
一方で現況渡しの場合は、清掃や修繕を一切行わない代わりに、契約時諸費用や家賃を安く抑えている、あるいは前住人の家財含めて所有権を移転して新しい居住者に便利に利用して貰えるよう配慮されたオトクな物件もあります。
現況渡しの中でDIY可能物件の場合には、たとえば賃貸住宅でありながら自分の求めるインテリアデザインを造作によって好きに作れる、といったものなどもあり、大きな魅力となっています。退去時の原状回復義務に関しても、入居者が造作した部分や購入して追加した組み込み設備は残していっても良いとする物件もあり、好みに応じて選べる自由さから、近年特に人気となっています。
大型マンション物件や、昔は官舎や社宅だったといった集合住宅などでも、同様のDIY可能現況渡し物件が多く存在していますが、常に空きを待っているほどの人気物件となっています。
いずれも、入居時と退去時にトラブルになりそうな残置物に関してや、原状回復範囲部分については、入居前契約においてしっかり条項として記載しておきましょう。あるいは契約前に質問確認事項として、双方の記名や押印のある文書として残しておく方が、何かと安心でしょう。