経年劣化
生活の中で不自然にできたものではない、敷金による修繕が不要な劣化、汚損の事です
経年劣化といえば、世間一般ではたとえば、何十年間も押し入れの中に保管していた靴やバッグを取り出したら、はがれたり変色していたなど、比較的衝撃的なシーンを思い出される方も多いかもしれません。
不動産においての経年劣化とは、人が普通に暮らす日常の生活を通して、時間の経過によって自然発生的に生じた、物品や室内環境の劣化、汚損のことです。
賃貸物件からの退去においては、敷金や保証金等から差し引きされる修繕費については何かとトラブルになりがちなものです。ですが、経年劣化による汚損、劣化に関しては、修繕対象に含まれないという事が、多数の裁判を経て判例として認められています。
つまり、入居者に物件を有料で貸渡す以上、無理のない日々の暮らしによる劣化や汚損は当然生じる事が明白であるとしています。その点を貸主側も了解した上で賃貸契約がされている、として、法律上で解釈されているという事です。
たとえば、窓枠や玄関扉のプラスチックパーツ等が日に当たることで、徐々に分解されてしまった耐候劣化という症状があります。また、毎日洗い物をするために立つシンク前の床材のすり減りや、毎日使う鍵穴やドアノブがすり減って変形してきたなどの通常損耗は、基本的には敷金などから差し引きされない当然の状態として、法律的に判断されています。
ですがたとえば、窓を開放して大雨が降ったことからくる窓枠や床の腐蝕、玄関扉の隙間に生えた雑草を抜かなかったことからくる建物の変形などは、その限りにはありません。自分の所有物として雑に扱うのとは異なり、他人から借りているものとして、丁寧に取り扱わなければならないということです。これを、善管注意義務といいます。
ちなみに、経年劣化を語るときに欠かせない用語に、原状回復義務というものがあります。これは、「借りた時の状態に戻さなければならない」ということを表します。
賃貸不動産の契約においては、敷金が全く帰ってこない、家主が家の改装などを行うのに大胆に敷金を使い込んでしまうことが、全国的に問題となっていた時代がありました。こういった流れを受けて、国土交通省が原状回復をめぐるトラブルとガイドラインをまとめ、公表しました。
現在、賃貸不動産の多くは、このガイドラインをベースにして退去時の費用負担を判断しています。先ほど登場した経年劣化と通常損耗の場合、このガイドラインによると、その修繕費用は原則貸主が負担するものとしています。
ですが一部の賃貸借契約で、原状回復について、たとえば畳については必ず入居者が交換する、などの特約がある場合、その特約の内容が優先される点に注意が必要です。
当初はほんの数年居住する予定だったものが、数十年も暮らすことになり、畳はこのくらいの期間であれば敷金からではなく大家さんの負担にして欲しいといったケースもあります。こういった時こそ、家賃交渉や契約事項見直しについて、不動産会社にご相談ください。しっかり双方にとってメリットある、さまざまなお手続きやご提案が可能です。