木造
建物の主要な構造体である柱梁桁等を木材でつくる工法の建築物のことです
アパートや戸建ての賃貸売買物件から建売分譲物件の広告など、広い範囲で見ることができる木造の表示。これは、建築業界では木構造とも呼ばれるものです。
建物が建っている状態や、周辺から振動などが伝わったときの力を受け建物を支え続ける構造体(柱、梁、桁、壁等)を、木材で作る工法の建築物のことを表しています。
木造と一口に言ってもさまざまな建て方がありますが、日本で最もよく普及しているのが、1891年の濃尾地震に前後して広く普及したと伝えられている「在来工法(=在来軸組工法)」です。これは、布基礎などをはじめとした立ち上がりのあるコンクリート基礎に、土台をつくり、そこに柱と梁などを配置して建物を支えさせるものです。
その土地がどんな地形で、どこが道路や斜面に面しているかなどにあわせて、柱の位置や間隔、強度などを調整して自在にアレンジしやすい建築方法となっています。四方に間口が広くとれる上、風通しや採光などに配慮した設計が可能で、日本の高温多湿な気候に適しているとも、いわれています。
土台と建物がしっかり固定されており、地震や台風、浸水などで大きな力を受けても、一定の力の範囲までは、長い時間建物の形状がそのまま保たれます。
他に、それ以前の物件や、現在でも寺社建築などに用いられることが多い「伝統工法(=伝統軸組工法)」もあります。
布基礎を用いず、礎石や独立した基礎の上に、天然木をかませた柱を配置してその間に貫を配置する工法です。いずれも手刻みで仕口を加工した、太い丈夫な無垢材同士を組み合わせた構造体です。
地面にある石と柱は、完全に接合固定されているわけではなく、互いの柱や石の形状などによってかみ合わされているものが多くあるのが伝統工法です。そのため、地震などで瞬間的に大きな力がかかると、柱を含めた上部分=建物全体がずれることがあります。
この伝統工法や在来工法の一部が普及したのは、江戸明治大正昭和初期などの都市部や人口密集地で行われていた破壊消防という手法のためです。「軸組工法の木造なら、コツがわかっている人が壊せば、建物全体は少ない作業工数で簡単に壊せる」という考えから来ているともいわれています。
これに対して、丈夫な工法の木造もあります。19世紀に誕生し、欧米など広く普及していた「枠組壁構法」で、軸組工法とは異なる構法です。
Framing(フレーミング)や2×4(ツーバイフォー)、キットハウスなどとも呼ばれており、日本では1970年代にハウスメーカー大手の三井ホームが販売を始めました。
これは、柱のように太い木材でフレームをつくり、そこに構造用合板等を釘でしっかり固定したものを耐力壁や剛床として、パーツ単位で組み合わせて施工するものです。
このパーツは、工場などでそれぞれの建物の設計にあわせて生産された後、建築現場に運ばれることがほとんどです。施工が早い他、職人の技術の程度によらず安定した高品質が確保されやすいことから人気があります。
軸組工法の場合、しなりを生かして地震や強風等の力から建物を護ることに対して、耐力壁や剛床といったパーツそれぞれが強固な構造をもち、全体で垂直方向と水平方向の強度を持つことで建物を護るという特徴をもっています。
木造住宅はいずれも、構造耐力上重要とされる部分が木材でできています。そのため、鉄筋コンクリート物件に比較するとシロアリ、腐朽に弱いといわれています。
耐久性を確保するために、原則、地面から1メートル以内の範囲で、防腐・防蟻の処置を行うことが定められており、通常はこうした薬剤を注入した木材などを使用します。また建物の高さは、地階を除いて3階までの他、耐力壁や根太の間隔等にさまざまな制限があります。
RCやSRCの住宅に暮らしたことがある人でも、自分が家を建てる時にはやはり木造が良いという方が多いようです。
木造住宅の場合、建材の選び方や建て方、設計によっては、周囲の音や振動を吸収してくれて静かに落ち着いた暮らしができます。豊富に用いられる木材によって、湿度や温度をゆるやかに快適にコントロールしてくれる作用もあります。
また、新築時から十数年ほどほのかに続く木の持つ独特の芳香なども、癒し効果などから広く愛されます。
外装材や内装材といった、見た目の部分に天然木材を使用する木造住宅も数多くあります。建築時から徐々に時間をかけて飴色等に変化していく姿も含め、愛着がわきやすいのは、木造住宅ならではのポイントかもしれませんね。