競売
債務不履行などの人物が持つ担保物件を、債権者の求めに応じて裁判所が差し押さえて入札販売することです
競売(けいばい)とは、住宅ローンや手形不渡りなど、さまざまな金銭等が払えない債務不履行の債務者の持つ担保物件や財物などを裁判所が差し押さえたあと、入札による所有者の移転を行うことです。
これは、お金を貸した人や売買等により支払いを受ける「債権者」、すなわち金融機関や取引相手など、民間の人々からの求めに応じて行われるものです。
一般的に会話などで口にする時は、競売と書いて「きょうばい」と呼ぶことが多いのですが、契約時や法律用語では正式には「けいばい」と読みます。近年のニュースなどでは、「きょうばい」と読むことも増えてきました。
競売を求める人が民間等の場合には、競売となります。他に、公有地や除却された自動車を所有する財物を財務省や地方公共団体など官公庁系が処分する目的や、税金滞納などにより差し押さえられた不動産や財物等を処分する目的で同じような入札が行われることもあり、これは公売(こうばい)と呼ばれます。
競売物件は、競売自体が始まる前の手続きで、裁判所職員などが、その抵当物件や財物の状況などについて調査を行い差し押さえます。
不動産競売で入札により落札される場合には、同エリア同条件の物件に比べて、数割安い価格となる事が一般的です。ですが、一般の住宅売買契約に比較して予期せぬ居住者が発生しているケースがあったり、メンテナンスを怠っている物件があったりする割合も、比較的高くあります。また、競売落札と支払い後にもかかわらず引き渡しを拒否される妨害行為なども、たびたび見受けられます。
そのため、購入後にかかる手続きには、法律家やさまざまな工事などが必要となる事も多く、素人向けではなく不動産に精通したプロ向けの入手方法などと長く呼ばれてきました。
ここ十数年は、相続時に放棄された不動産物件や、評価額が著しく下がり管理費が高額であるため、物件維持にかかる追加融資や、売買も賃貸も容易でなく放置される「負動産」とよばれる物件を中心に、取得時イニシャルコストが非常に安いだけでなく、引き渡しなどがスムーズに行えるので素人にも参加しやすい、といった競売物件が増えています。
ここから先は、競売にかかる、すこし細かいお話です。競売は、支払いなどが滞った直後に行われるわけではなく、段階的に債権者や裁判所からの幾度かの手続きを経た後に実施されます。
まずは金融機関や契約相手から督促状や催告状が届き、一括返済を求められます。これに応じなければ、通常、保証会社等が間に入っている場合には、保証会社等が本人に代わってこれらの相手先に代位弁済を行います。この代位弁済を行った人は、事前に契約などで定めていた「保証人」といい、代わりに一括返済したことで得た立場を、「弁済による代位」といいます。
この保証人、弁済による代位を得た人対しては、本来なら債権者がお金を貸すときに設定していた抵当物件や借りた人が持っている財物を、処分して支払った分を弁済してもらう必要があります。この権利を、求償権といいます。
お金を借りた当時には、求償権は債務者にありますが、保証会社等が貸した人=債権者に対して代わりに支払った後は、抵当権を設定しているのは債権者であっても、求償権は保証会社等になります。
金融機関や契約相手の判断によっては、様々な事情で保証会社などによるまるごとの返済は難しい、あるいはすぐに現金化したいといったこともあります。こうした場合には、債権回収会社や、その他不良債権をまとめて割り引いて引き受けるサービス業者などに、この立場が移ることもあります。
直接この抵当権が設定されていた、不動産やその他の財物を入手して使用するために金銭を代わりに支払う、などの本人のメリットがある人は法定代位と呼ばれます。対して保証会社等のように、単に一時的に建て替えるだけで、保証会社等側には抵当物件などを入手して使用するなどのメリットが無い立場の人のときには、任意代位と法律上分けています。
2020年に改正される前の民法では、任意代位を行う場合、事前に保証人として付記登記を行っておく他、債権者の承諾が必要とされていました。この付記登記とは、債務者本人に代わって債権者に代位弁済を行うことで、担保権を行使することができる資格を備えたということを法務局に登記します。そして、権利にもとづいて、各種の手続きを起こす際の根拠とするためのものです。
ですが、民法改正後は、この付記登記と債権者の承諾が不要となりました。
その後、新しく保証会社等の求めに応じて、裁判所等から本人に対して競売開始決定通知が届き、その抵当物件や本人の身辺に調査の為に裁判所職員等が訪れます。これは、俗にいう差し押さえです。
その後に、競売入札が実行され、落札者に不動産が売却されたり、財物が運び出され、その物件自体や財物の現在の所有者はだれで、元の持ち主が使用不可との貼り紙などがされ所有権が移転し、手続きが完了します。抵当物件が住宅等不動産の場合、このときに退去が必要とされます。
通常保証会社が代位弁済を行う際は、半月から1か月ほどで競売の申し立てを行うのが一般的です。
競売による売却が実行されても、売却代金の納付が行われるまでなら、競売取り下げの手続きが可能です。この競売取り下げは、債権者が書面により裁判所に行うものですが、この手続きを取れるケースはかなり条件が限られます。
通常は、金融機関や契約相手から督促状や催告状が届き、一括返済を求められた段階で、ローンの借り換えローンなどを組みます。あるいは物件の所有権だけをローン会社やリース会社などに移し、その物件に居住しながら月々家賃を支払い続けるリースバックなどを利用することで、ローン会社から一括返済をかわりに行ってもらう競売回避が一般的です。
ローン会社やリース会社などによるリースバックの価値の源泉は、一般的にはその土地に対してです。特に、しっかりとしたビンテージ物件級のうわものがあれば、それにも一定程度の価額が付きます。そして売却益として、ある程度まとまった資金が手元に入ります。
そのため、土地評価額が高ければ、リースバックで居住中の家賃支払額は、比較的安く済みます。リースバックで入居中に家賃が支払えなくなった場合には、退去することになります。また将来的には、一度リースバックにしたものを再度購入することも可能です。
ですが、本当に支払いが滞っている時というのは、こういった手続きに必要な少額の金銭すら捻出できないことも多いもの。
物件オーナーの場合、その所有物件が賃貸や値上がり待ちの売却用物件で、別途運用中等の場合には、サブリースによる経営以外にも、保険系金融商品である家賃収入補償、空室補償保険などのサービスを事前に契約しておくなど、日ごろからリスク分散を図っておきたいものです。