防食/防蝕
金属のさびを防ぐことで、水回りの鏡や、エクステリア金物等に加工がされています
防食/防蝕(ぼうしょく)とは、金属の腐食、さびを防ぐことを表します。防触とも書き、いずれもまったく同じ意味で食、蝕、触はいずれも、なにかに浸食されむしばまれるといった意味があります。
現在住宅のインテリアやエクステリアの建材用に使われている金属パーツの多くは、アルミやステンレス、真鍮などです。鉄が使われている場合にも、上から溶融亜鉛メッキなどを施して、使い込むほどになじんでいく見た目と腐食やさびの防止を両方備えているものが多くなっています。
ご家庭内の設備の中で、よく防食/防蝕の表示がある物は、鉄製の階段やデッキなどや、屋外燃料タンク。屋内では、お風呂場や洗面台の鏡でしょうか?それぞれ、製品の中には、さまざまな方法でさびを発生することを防ぐ加工がされています。
鉄などさびやすい金属製の階段やデッキ、屋外燃料タンクなどでは、防食/防蝕機能は、一般的にメッキや塗装によって機能が確保されています。
製品として整形前の段階で材料全体に加工を施すほか、製品として整形する際に発生した切断面や曲げ位置など、金属の密度むらからさびが発生しやすい部分を中心に、出荷前にメッキや塗装を行う方法も有ります。また中には、取れにくい焼付塗装などを行うタイプもあります。
塗装タイプでは、中に含まれている塗料や接着剤、光の散乱やコートを目的とした鉱物などの種類によって、どんな仕組みで塗料の劣化を防いでいるのかが異なっています。腐食が始まる前に塗装屋さんなどのプロに見てもらいながら、定期的に塗りなおしなどを行って維持します。
海から数十キロという町でも、塩気を含んだ雨水が降ることも少なくありません。とくに屋外で頻繁に発生さびに悩んでいるご家庭では、製品の接合面やねじ止め部分など、金属が合わさっているところを中心に、雨水が乾燥した際に塩分が残っていることが、さびの原因となっていることもあります。
また、植木鉢に与える液肥などからの塩分が原因で、さびなどが発生していることもあります。
年に幾度か、該当するエクステリア部分などを高圧洗浄するほかに、数年に1回程度は塗装をあらためて行う方が良いでしょう。
宅内の水回りに設置される鏡は、化粧台や手鏡などとは異なり、防曇ガラス(ぼうどんがらす)加工がされているものがほとんどです。これは、鏡表面に錫などの薬品を使って曇りにくい膜を形成しています。この加工自体は、自動車ガラスなどにもよく見られます。
これとは別に、鏡の裏面には、アルミニウムや銀などを使って像を映し出す面をつくり、さらに銅や有機塗料で酸化防止処理を行っています。こうして作られた裏面鏡(りめんきょう)という鏡をカットして、端面を磨き上げて触れても安全な丸みや割れにくい角度にし、端に樹脂加工を施して住宅や製品などに設置されます。
ですが思い出してみると、同じ条件で施工された居間や寝室の鏡には全く問題が無いのに、お風呂場や洗面台の鏡は、端から黒く、かびたようなみためで、どんどん進んで行ったりすることはありませんか?これが腐食(しけ、さびとも呼ばれる)です。
通常はカットした後の樹脂加工が薄いか加工漏れ箇所があった、加工したものの劣化しやすい薬品などを使っていた、掃除の際にこの部分を磨きすぎたり異物として剥がしてしまった、などが第一の原因です。そしてそこから、湿気やさまざまな薬品、洗剤やせっけん残りなどが染みていき、腐食していくのが第二の原因です。
ご家庭で日常的に使う低濃度の洗剤などの酸化剤で、急に腐食が始まることはありません。一方、石鹸を近くに保管していたり、石鹸が飛び散り付着し易いレイアウト、強めのイオン化洗剤などが付着しやすい場合には注意が必要です。漂白剤やカビ取り剤の原液をよく使用し、洗い流しが不十分で強い塩素等にさらされやすい、特定の成分が強い硬水エリアにあったり、常時水が溜まりやすいといったお宅では、腐食が早まることもあります。また、鏡の設置時などに、側面や裏面に小さな傷ができていると、そこに水分が溜まりやすく、腐食が進みやすくなる場合があります。
一度腐食してしまった部分は、元に戻ることはありませんので、通常は、鏡を交換して使用することになります。
腐食が始まりそうな鏡は、カット面を斜めから見るとその部分だけ黒い影ができています。これは切断面の金属層の内、空気に触れているところや、カット時に断面に角度が付いていて均質ではないところ、そして腐食がすでに始まりつつあるところです。
この段階であきらめてしまっても良いのですが「DIYで、なんとかこの鏡を救ってやりたい!」とお考えなら、幾つか方法が有ります。断面部分の汚れを丁寧に中性洗剤などできれいにした後、鏡断面用の塗料を塗る他、マニキュアなどを塗布することで、ある程度腐食のスピードを遅らせることもできます。
鏡の断面全体を覆いながら、裏面側に1ミリ程度以上被るように塗布するのがコツです。薄めに塗布するタイプや剥離が容易なタイプ、クッション性が特殊に高い発泡タイプのマニキュアなどでは効果は高く出せません。
中には、製品になる前、鏡の裏面加工の段階で、すでに酸化防止加工や防錆加工が不十分である製品もあるため、断面だけで一概に効果があるとは言えません。
ちなみに、鏡を交換するとなると、一般的なビジネスホテルの鏡サイズで5000円〜で販売されているほか、最近は防食処理を施された樹脂製鏡や金属鏡なども存在します。
ガラス鏡とは異なり、ゆがみなどが存在するものもありますが、価格帯によっては通常のガラス鏡と同じ程度の品質で使用できます。また、防食鏡と同じような方法で、さらに腐食しにくさを求めた、耐食鏡/耐蝕鏡(たいしょくかがみ)などの製品もあります。各社、耐食レベルは様々です。
壁付け鏡や洗面台の鏡は通常通りの使用であれば、消耗品ではなく、建物の設備です。入居半年で全体が真っ黒になどあまりに腐食が早いなどがあれば、管理会社に相談してみましょう。