藍染め
生活の知恵が詰まった日本の伝統的な染色
藍は人類最古の染料とも言われています。日本だけでなく、世界各地で使われてきました。
日本での藍の歴史は、飛鳥〜奈良時代に、中国から朝鮮半島を経由して伝来したところから始まったと言われています。
平安時代までは、藍は上流貴族など身分の高い人が身に着ける高貴な色でした。鎌倉時代には、武士が鎧の下に藍の一種である「かちいろ」を身に着けるようになります。藍には消炎や殺菌、止血の作用があったことと、勝ちに繋がる名前で縁起が良いという発想から好んで使われるようになっていきました。
庶民の間にも広く普及したのは、江戸時代に入ってからです。作業着や着物、寝具などにも使われるようになりました。
藍染めは丈夫で燃えにくく、保温性にも優れていることから、消防組織である火消したちが着る半纏や、船乗りの制服にも用いられていました。
藍染めの原料となる藍の色素を含んだ様々な植物は、実は世界に100種類以上もあると言われています。
日本では、タデ科の一年草であるタデ藍が代表的です。国内では徳島県が藍の生産量1位の産地として知られています。
春に種を蒔き夏には刈り取れる藍は、毎年秋になると台風による氾濫を繰り返していた吉野川流域でも、被害を受けずに栽培することができるありがたい作物でした。
第二次世界大戦中は、藍は栽培禁止の作物とされていました。徳島の藍師だった佐藤平助氏は、姪の岩田ツヤ子氏と一緒に、林の中の目立たない開墾地を使い人目を避けて密かにタデ藍を栽培し藍の種を収穫し続けていました。この二人の命がけの努力があったお蔭で、終戦後に藍の栽培をすぐに再開することができました。
日本の伝統的な藍染めは、タデ藍からすくも法で藍の染料を取り出し、天然灰汁発酵建てで染められます。すくもを作るには、まず藍の葉を乾燥させます。そして、初秋から師走にかけての約100日をかけて発酵から熟成させていきます。すくもは膨大な時間と手間ひまをかけて作る染料液なのです。
藍染めは、使い込んで洗濯を繰り返すことで、次第に色が落ち着いて、やわらかくなって肌に馴染んでいく風情のある生地です。近年では、藍が持つ防臭や抗菌作用などの特性が改めて見直されるようになり、藍染めの産着やベビー用品が注目されています。